2017年10月28日

ゴルフトーナメントの準備

トーナメントグリーン
ゴルフトーナメント開催コースにおいて、コースセッティングの全権を委任されたグリーンキーパーは、トーナメント当日まで気苦労が絶えません。中でも一番はグリーンの仕上がり(グリーンの速さと硬さ)がトーナメントの成否を決めると言っても過言ではありません。
トーナメントディレクターからの無理難題と思われる様な、厳しいコースセッティング要求に、日夜苦労の連続です。トーナメントを経験したグリーンキーパーは、異口同音にこの話にうなずきます。
特に男子プロのツアーは、その要求される水準は高く、スティンプメーターで12フィートというスピード、硬度計では11s/㎠という硬さ・・・・が目標とされています。
30年前は、このような計測器が発明されていなかったため、ただ早くて硬いグリーンを造れと言われて、グリーンキーパーも感覚の世界でやるしかなかったのです。
しかし現代は、前述のスティンプメーターや硬度計等の計測器が発明され、数値目標もはっきりしています。
一方では、プレーヤーは相変わらず速さも硬さも感覚だよりの世界でありますから、それを自分なりの感性でとらえるしかない状態と思います。
早くて硬いグリーンは、しばしば全米オープンとか全英オープンなどのトーナメントをテレビにて観戦する機会がありますが、グリーンは緑色ではなく、黄色や茶色になっていることもあります。これはグリーン上でボールの転がりを速くさせる為、極端に刈高を短くしたり、転圧して固く引き締まったグリーンにしたりすることで、芝が受けるストレスが原因です。
筆者もトーナメント開催コースのグリーンキーパーの立場に立っていたことがありますから、テレビを見るとついつい大会終了後に相当なダメージを受けたグリーンをどのように回復させるのかが心配になります。
さて、トーナメントの準備前には健康なグリーンを造っていなければなりません。
何故なら、トーナメントは一時的な厳しい環境を作り出しているに過ぎず、芝草は病と闘っているようなものなのです。
例えるならば、毛を刈り取られた羊たちのようなものですから、あちこちにバリカンによる出血もあれば、寒さに弱い裸状態になっていることを感じていただければよいと思います。
健康な状態とは、更新作業が行われ若い芽が多く、根が10cm以上深く地中に入り、枯れた根や茎や葉で構成されるマット層が薄く、芝の葉がピンと立っている状態を言います。
その健康的な芝の状態を維持する為には、生育環境を良好にする普段のメンテナンスがいかに重要であるかを感じております。
そして、開催日の1年前からグリーンのセッティングを始めます。
仮に大会開催日のグリーンの刈り高が3oとしますと、1年前からは3.5mm位で刈り込みを行い徐々に慣らして行きます。このような低刈りをするためには、グリーンの表面に1mmでも凹凸があると、グリーンカットの際に「ちぎり」「段差」が生じてしまいます。また、きついアンジュレーションでも段差が生じる事があります。この事からグリーンの表面を薄く作り上げ、地盤を固くしなければ、いくら刈り高を下げてもきれいに仕上がらないのです。この刈り高0.5mm差の為にグリーンキーパーやスッタフは苦労する訳です。
そしてトーナメントを開催するコースであっても1年も前からお客様を規制する訳には行きません。むしろ開催直前まで通常営業をしなければならないのです。通常営業をしながら先ほどのコンマ数ミリの世界を表現しなければならないのです。ここが一番の難しく悩ましい所です。コースクローズさえできたらもっと良い仕上がりに持って行けるのにと多くのグリーンキーパーは思っています。時には経営サイドと意見を戦わせ、結果的に悔しい思いをする事があります。それでもプロのプレーヤーが存分にプレーに専念できる様にするのがグリーンキーパーに課せられた使命ではないでしょうか。

ティグランドとフェアウェイのトーナメント仕様
ティグランドの整備は、大会開催のやはり1年前に入ります。使用するティグランドは、各ホールにある3面から5面のどれかになります。これが決まったら、開催時期がどの季節になるかによって、草種の変更や仕様を検討します。青々としたきれいなティグランドはカメラ映りが良いですから。
夏真っ盛りならば、関東から関西のゴルフコースはコウライ芝のティグランドとなりますが、春早い3月4月ならば洋芝のティグランドに変更し、その青さを表現してみたいものです。
ティグランドは毎日使われるものですが、その利用頻度によって傷みは変わってきます。
したがって、できるものならば大会直前は使用禁止として、痛みを軽減しなければなりません。
さてティグランド仕様留意点は、前昇勾配がついていることや面に凹凸がないこと、及び裸地がないことになります。(200uあるいは300uの面積確保も必要)
前昇勾配とは、ティグランドの表面排水確保のため、前が高く後ろが低い1%から2%の傾斜をつけていることを言います。
フラットならば良いと思われがちなのですが、これは水溜まりを誘発し、凹凸や裸地になりやすく維持できません。
そういえば、高速道路や国道も表面排水勾配(傾斜)が必ずつけてあります。なければ水溜まりを泳いで車を走らせることになります。
この正確な勾配を確保することが整備の肝となりますが、未整備のコースは国内にたくさんあり、水溜まりによる病気や苔、あるいは藻も発生しています。こうなるとやがては芝がなくなり裸地になってしまいます。ティグランドに限らずコース全体で、表面排水をどのようにコースデザインに組み合わせて行くかも設計者の腕の見せ所ではないでしょうか。
次にフェアウェイでは出来る限りディボットのない状態にしたいものです。また、ボールが芝に沈むような所がない様にするのもトーナメント仕様としては重要なポイントです。
コースの難易度を決定する為に、プロゴルフ協会からフェアウェイの幅等細かい指示があります。加えてラフの芝刈高にも注文が来ます。一般的に通常より長めの(40mm〜60mm)オーダーが来ます。長くするのは簡単ですが、トーナメント終了後にいきなり元の刈高に戻す事はできません。一ケ月程度で徐々に戻して行きます。この間は一般プレーヤーにとっては厳しいコースとなってしまいます。
トーナメントを開催するに当たっては、コース管理のグリーンキーパーや管理スタッフは本当に苦労の連続です。天候に振り回されながらも当日に最高のコンディションを提供しようと努力します。トーナメント終了後は実に良い経験と勉強になった事を一同で感じるものです、そう言う意味ではトーナメントを開催した事は将来的にも大きな自信に繋がると思います。
posted by ミナミフジCC at 09:52| コース管理入門編