2018年09月22日

ベントグラスの夏越しを考える(その二)

ベントグラスの夏越しを考える(その二)

(ペンクロスベントの実態)
日本のゴルフ場に使用されているベントグラスといえば代表格はペンクロスベントと思われます。このペンクロスベントは、アメリカペンシルバニア農業試験場にて3種類の親株から交配される一代交配種(F1)として1954年に発表されて以来、世界中のゴルフコースのグリーンに使用されてきましたが、世界のゴルフ場のグリーンにおけるペンクロスの使用割合は80%以上といわれています。
このペンクロス以前のベントグラスは、高温の条件下で衰弱がひどく、耐病性に劣っていて、冷涼地のごく限られた地域以外は夏の利用ができませんでした。
ゴルフ発祥の地であるスコットランドをはじめヨーロッパや北米は、この冷涼地が大半であったことから、ゴルフ場のグリーンにペンクロスが普及したと推測いたします。
しかし、日本のゴルフ場に置き換えれば、北海道や東北及び本州の山岳地帯のゴルフ場ならば前述の冷涼地に該当するため問題はありませんが、関東や中部および関西のゴルフ場においては、ペンクロス受難地域となってきました。
なぜなら、日本は平均気温の上昇する気候変動が激しく、温帯から亜熱帯となり、さらに熱帯化しているからであります。
この気候変動は、60年以上続いてきた絶対的グリーンの存在であったペンクロスベントに危機を与えようとしています。

早朝の13番G.JPG


(夏期の劣化の速さ)
9月に入って少しは気温が下がり始めたと思われますが、7月8月の日中の最高気温は35℃を超え、夜の気温も30℃を下がらない日がかなりの確率で続きました。
ベントグリーンの暑さ対策として、梅雨入り前にコアリング等を実施して、少しでも排水を良くし、また間引きをして個体の若返りを図り、根を深く張らせるなどの予防策を徹底しているのですが、実際暑くなってから手を入れることはできません。
せいぜい、刈り高を上げて個体が弱るのを防ぐか、早朝に気温が上がる前に散水をするか、日中に霧状の水を散布して気温を下げるか等を実施しますが、なかなか効果は上がりません。高温時のグリーンの劣化は極めて速く、一晩でグリーンが無くなるなどのリスクは高いものです。そこで、夏場の作業の大半は、グリーンを守る病害予防剤の散布に割かれます。
しかしそのような努力をしていても、今年の関東周辺の多くのゴルフ場のベントグリーンは赤く変色して、ところどころは裸地化がみられました。
ここまでくれば、絶対的グリーンのペンクロスベントを、別な品種に入れ替えなければいけないという話題が聞こえるようになりました。


(ニューベントへの転換)
現在バイオテクノロジーの進化により、遺伝子(DNA)ベースで新品種が誕生しているのですが、その一つである007を例にとって説明したいと思います。
007は、米国ニュージャージー州ラトガース大学で研究開発された最新世代のベントグラスであります。過去にこの大学の頭文字をとってL○○という品種が出回っています。
例えばL−93は、1993年ラトガース大学で開発された品種という意味になりますが、さらにL−93をベースに、サウスショアなどの因子を含め改良されたのが007にあたります。
初代がペンクロス等とすれば、2世代目がL−93やサウスショアになり、3世代がAシリーズ、4世代が007と続いてきました。
当ゴルフ場においてペンクロスベントから転換試験を行っている品種としては、前回書きましたCY2(2世代目)がありますが、この夏の状態は良好であったと感じております。
さて、国内においてこのCY2を全面的に使用し始めたのは、千葉市民ゴルフ場が始めであったと記憶しておりますが、かのゴルフ場の夏場のグリーンの状態はきっと良好であったと推察できます。
また、ニューベント以外の品種にも、ペンクロスベントを上回るものが発表されており、当ゴルフ場ではこの品種を使ってここ数年試験を始めております。

(アルファ品種について)
米国ジャックリーンシード社の開発した品種に、アルファ・クリーピング・ベントグラスがありますが、ペンクロスベントグリーンに繁殖する雑草であるスズメノカタビラを駆逐するという効能が特徴的な品種であります。
本来スズメノカタビラは、気温が27℃超の条件では枯れてしまうといわれておりますが、私の観察によれば、国内の多くのゴルフ場グリーンがペンクロスベントの中に30%以上のスズメノカタビラが繁殖しており、これが夏場になればすぐに枯れてしまい、プレーヤーから顰蹙を買っているという事実があります。
しかし、ペンクロスベントなのかスズメノカタビラなのか見分けにくいこともあって、多くのグリーンはまだら模様の状態でお互い育てられています。
したがって、30℃を超えてグリーンが枯れたという話は、多くは雑草が枯れたことを指している場合があると思われます。
話をアルファに戻しますが、この品種は匍匐力が抜群であるといわれ、スズメノカタビラの侵入を抑える働きが確認されています。
また、高温に強いことから夏場の管理もしやすく、気候変動による熱帯化にも対処できるものと思われます。
さらにアルファ―の蒔種時期は夏場に行うというのも特徴的なことで、この時期スズメノカタビラは枯れてきますので、取って代わるには良い季節と言えます。
ニューベントへの転換には、その繁殖力の大きさに一致した施肥が必要といわれ、また刈込回数増大にもつながってきます。
新品種がコース管理作業を増やし、コストを上昇させるとしたら、これは別な問題もあるものと考えられます。
どにょうな選択が一番良いのか、まだまだ研究の余地があるものと思われます。
posted by ミナミフジCC at 11:08| コース管理入門編