2017年12月26日

植栽とコース管理

植栽とコース管理

(桜の話)

某ゴルフ場のコース委員会の出来事です。
某委員からコース側に要望が出されました。
これから桜の木を植えて花を増やしましょう、サクラは日本を代表する花であり、サクラの花を見たくて来場者も増えると考えられるがいかがなものでしょうか。
これに対して担当のグリーンキーパーが反対意見を述べました。
桜(ソメイヨシノ)ならば2週間程度が見ごろであり、開花期間の短さと管理の手間を考えるとマイナスになります。
何故なら、サクラは毛虫(マイマイガとかサクラスガ)が大量発生しやすく、その駆除に追われるほか、テング巣病などの病気が発生しやすく、その予防も大変です。
さらに最近は、乗用カートでのプレーが多くなり、サクラの地上根によりコース脇を走るカート道路は破壊され、道路がデコボコになってプレーヤーの苦情が絶えません。
(併せてサクラの木の周囲は芝生が成長しにくいので、裸地になりやすいです。)
というわけで、ゴルフコースではサクラの植樹が減少しているようです。
このサクラ、春の季節を彩りまた散っていく美しくも可憐な花ですが、なかなかゴルフコースとは相性が合わないようです。

(ゴルフコースと植栽)

ここ数年の出来事でありますが、メタセコイアという木がゴルフコースで話題となっています。
別名「あけぼの杉」といって日本各地で植栽されており、原産は中国となっています。
その特徴は、きわめて成長が早く、大木になるまで時間がかからないといわれています。例えば、幼木を植えて2〜3年もすれば高さ10mを越すような成長が期待できますし、開業後30年経過したゴルフコースのメタセコイアは、20m以上の大木となっているものですし、まっすぐに伸びる習性をもつことから、ゴルフコースのセパレート&防球用に最適といわれ植樹されてきました。(メタセコイアは歴史的に古い起源をもつ木であり、地球の遺産であります。)
しかしこの木は現在コース管理者にとって不都合な木に指定されています。
何故なら、先のサクラの項でお話しましたように、道路破壊の達人なのでありますから。
成長が早い事は根の張りが早いということになりますが、浅根性の性質を持つことから地上付近の根を横に張り出すという特技があります。
同様な事は、植林されたスギも同じ特徴があります。植林は主に挿し木を使いますが、スギの挿し木は地中深く伸びる直根が出ないため台風や豪雨によって簡単に倒れやすくなります。
これに対して種から育った杉は「直根が伸びて、土砂災害に強い森林になる」というから自然の災害防止の為には種から育てないとダメということになります。
つまり、杉林で発芽している幼木は大切にしなさいという事ですね。
コース管理者は、台風などの豪雨や強風が影響を受けやすいゴルフ場を管理しているため、植樹とは大切な仕事なのです。

(樹木の直根性と深根性)

筆者は長い事、針葉樹は直根性ですなわち深根性と思っていましたが、真実は違っていたようなのです。
但し基本的には、樹木の枝ぶりを見ればその地下の根の張り方は大体理解できるのでありますから、それはそれでよいものと思います。
しかし深根性の樹木と浅根性の樹木の分類を見れば、なかなか興味深いものがあります。
針葉樹の中では、アカマツやクロマツやモミやアオモリトドマツなどは深根性でありますが、ヒノキやカラマツやヒバやトウヒは浅根性に分類されています。
成長に時間がかかり、なかなか大きくならない樹木は深根性であるようなイメージです。
広葉樹の中では、ケヤキやクヌギやミズナラやトチなどは深根性でありますが、ミズキやブナやカバやニセアカシアは浅根性に分類されています。
広葉樹の深根性樹木のイメージは、家具とか建築に使われる樹木の硬さと質とかを感じさせるものです。
自然界の山(森林)にはこうした樹木を見つけて、分類して何か得るものがありそうですが、ゴルフコースにおいては、地盤の土質とか岩の存在とかを確認するとともに、植栽の是々非々を理解していかなければなりません。
但し、日本は国策としてスギとヒノキを植樹してきましたので、多くの森林はこれらの木々でおおわれています。(国土のおおよそ10%)
しかし、今後のゴルフコースを考えるならば土地にあった木々を植栽したいものです。
100年単位の夢のような一歩になりますし、将来に向かっての強い思いですから。

(標高1000mの指標木)

若いころに東北の山々を散策していた頃の事、営林署の方に標高と林相の違いについてお話を聞く機会がありました。
その折、1000m指標木という言葉が出まして、アオモリトドマツ=1000mという内容でした。
そしてまたシラカンバ600m、ダケカンバ700mという記憶もよみがえります。
当時北東北の国有林を管理する青森営林局の方だった思いますが、指標木の話は生涯忘れられない思い出となりました。
このような話をつなげると、それぞれの土地には必ず指標木があるに違いないと思います。
それぞれの気候と地質に見合った樹木とは何でしょうか、私たちはそのような樹木を大切に育てているのでしょうか。
ゴルフコースに自然に育った木々は、その土地になじみながら成長して、美しい大木になっていくでしょう。
当ゴルフコースにおいても、順調に生育している木々もあれば、病気になって枯れたり、台風によって倒れたりするものがありますが、生き残って大木になっているのは貴重な存在であります。
プレーヤーの思い出には、その木々がプレーの思い出となって残っていくことでしょう。
その反対に、そのホールの顔となる名木は、コース管理者が何十年も育ててきた結果と思います
そして「モミの木が残った」「ケヤキが美しい」などとなれば幸いです。
posted by ミナミフジCC at 10:55| コース管理入門編